第12回 麻雀の数学的考察 〜配牌は何種類あるのか〜(続き)

さぁいよいよ同一配牌に出会う確率を計算します。

(3)配牌のカウント
さて、まずは配牌が何種類あるのかを計算します。計算といっても地道に数えるしかありません(T-T)が、これで作業の半分は終わりです。

子(散家)の場合、配牌は13枚です。どうやって数えましょう。
今回は配牌の「牌の種類の数」で場合分けをして数えます。もっといい方法をご存知の方はぜひメールで教えて下さい(^^)

13枚の配牌で一番牌の種類が少ないのは4種類の時です。3種類では4枚ずつ(配牌で3カンツ)あっても12枚にしかならないからです。

逆に一番多いのは対子や暗刻のない、13種類の牌からなる場合です。

では5種類の場合を例として、数え方を説明します。
5種類を仮に、東南西北白とします。これがそれぞれ何枚ずつあるかを次の様に表します。

西

この場合東4枚、南4枚、西3枚、北1枚、白1枚の計13枚です。
しかし、同じ枚数でも、南4枚、西4枚、白3枚、東1枚、北1枚というのは当然別の配牌ですから、それらを次のように数えます。

よって、この5種類の場合、
5C2×3C1=10×3=30通り
の組み合わせがあることがわかります。ここまでを次の様に表します。

西
5C2×3C1 =30

また、5種類の場合の枚数の組み合わせは、上記だけでなく、東3枚、南3枚、西3枚、北3枚、白1枚というケースもあります。
配牌で大四喜字一色四暗刻単騎テンパイ!

これらをもらさず、重複しないように注意しながら列挙して、それぞれ上記のように組み合わせを計算すると次の様になります。

西
5C2×3C1 =30
5C2×3C1 =30
5C2×3! =60
5C3×2C1 =20
5C1 =5
5C2 =10

右端の数字を全て加算すると155通りになります。東南西北白の場合で、これだけあるんです。

さて、麻雀牌は34種類ありますので、東南西北白のような5種類を選ぶ選び方は、

34C5=278,256通り

ですから、5種類の場合の配牌の種類は、

155×278,256=43,129,680通り

で、下のように表が完成します。

5種類
5C2×3C1 =30 155×34C5
=43,129,680通り
5C2×3C1 =30
5C2×3! =60
5C3×2C1 =20
5C1 =5
5C2 =10

さて、このページも大きくなりつつあるので、他の場合の表はこちらを参照下さい。
以下には、右端の部分を中心に取り出してみました。

4種類 20×34C4= 927,520
5種類 155×34C5= 43,129,680
6種類 456×34C6= 613,276,224
7種類 728×34C7= 3,916,360,448
8種類 728×34C8= 13,217,716,512
9種類 486×34C9= 25,491,310,416
10種類 220×34C10= 28,848,190,800
11種類 66×34C11= 18,882,452,160
12種類 12×34C12= 6,580,248,480
13種類 1×34C13= 927,983,760
合計   98,521,596,000

2001.02修正
「らすかる」さんありがとうございました。
「らすかる」さんのページはこちらです。

これで配牌が全部で約985億通りあることがわかりました。

1秒毎に配牌をとっても3千年かかります(笑)

ところで、この項の冒頭で「面白いことに気がついた」と書きましたが、皆さんも気づかれましたか?

私が気がついたのは、配牌が約985億通りあるということはつまり、

闘牌途中も含めた麻雀の牌姿すべての数もこの約985億通りしかない

ということなのです。
それで? という声が聞こえてきそうですが、私はとても感動しました。

私は麻雀の牌姿が全部で何通りあるか正確に数えた!(笑)

(4)お詫び
私は最初、確率の計算式を間違えて百万分の1という結果で公開してしまいました。修正前のページを見てくれた方ごめんなさい。
この確率計算は大変難しく、ある思い切った近似をしないと計算できません(少なくとも私には)。
と、いうのはサイコロの出目や誕生日などと異なり、985億通りの配牌はそれぞれ出現確率が異なるからです。
例えば「万子の九蓮宝燈の9面待ち」の配牌は9種類の牌からなる配牌で、上記の表のように記述すれば、「311111113」となり、一万と九万は4枚のウチどれを使わないか4通りあり、2万から8万はどの一枚を使うかで4通りずつあります。結局42×47=49通りの組み合わせがあります。
また「国士無双の13面待ち」の配牌は13種類の牌からなる配牌で、「1111111111111」の形です。全ての牌はどの一枚を使うか4通りずつあるので、413通りの組み合わせがあります。
つまりこの2つの配牌はともに、985億のウチの1つではありますが、出現確率は44倍も違うのです(じろうさん@未勝利スポーツ、ありがとうございました。まだHPを運営してらっしゃいましたら是非ご連絡下さい)。
私にはこの確率を計算する能力はありません。そこで今回は不正確を恐れず次のように近似します。正しい確率の追求は今後もトライします。

985億通りの配牌の持つ出現確率は全てを合計すれば当然「1」になり、その平均は「985億分の1」であるので、各出現確率を「985億分の1」とする。

以下はこの近似のもとで計算しました。

(5)確率計算
やっとここまできました。
さっそく確率を計算しましょう。求める確率は以下のとおり定義したのでした。

直感的
な定義
過去において経験済みの配牌に再度出会う確率
今回の
定義A
週2回、4半荘/回を50年続けた場合(計2万荘。半荘1回で10局として20万局)に、その全ての配牌のウチ同一のものが、少なくとも1組ある確率
今回の
定義B
過去に相異なるX種類の配牌を経験している人が、そのウチの1つと同一の配牌を今得る確率

まずはAからです。求めた配牌の数(約985億)をN、経験局数(20万局)をnと書きます。
n個の配牌を一つずつチェックしましょう。

1番目の配牌は何でも良いので、N/N
2番目の配牌が1番目の配牌と異なる確率は、(N-1)/N
3番目の配牌が上記2つと異なる確率は、(N-2)/N
n番目の配牌が上記(n−1)個のいずれとも異なる確率は、(N-n+1)/N
上記n個の事象が同時に起これば、1組も同一のものがないことになるので、その確率PA2は、

PA2=((N-1)/N)×((N-2)/N)×…×((N-n+1)/N)

となり、実際に985億とか、20万回とかを代入してみると、

PA2≒0.816=81.6%

さて、ここまで子の場合で計算してきましたが、親の場合はどうでしょう。
親は配牌が1枚多いので、Nがもっと大きくなります。結論からいうと約3265億通りです。これも同じように全部数えました(T-T)
20万局のウチ4分の1は親と考えていいでしょう。
そこで、子で15万局、親で5万局として、少なくとも一方で同一の配牌を経験できる確率PAを求めましょう。
子の15万局の配牌が全て異なる確率(PA2子)と親の5万局の配牌が全て異なる確率(PA2親)をかけて、1から引けば良いわけです。

PA=1−(PA2子)×(PA2親)
  ≒1-0.89209×0.99618
  ≒0.111=11.1%

ちょとびっくりしました。
985億通りも配牌があるのに結構同じものに出会えるんですね。
20万局経験すれば、十人に一人は経験できるわけですね。

次にBの確率を計算しましょう。18歳から打ち始めてAと同じペースで今33歳とすると、15年で半荘6千回(6万局)になります。
子の場合の求める確率PB1は、

PB1=(6万×0.75)÷985億
  ≒4.57×10-7≒1千万分の5

親の場合の求める確率PB2は、

PB2=(6万×0.25)÷3265億
  ≒4.59×10-8≒1億分の5

子の場合で、ジャンボ宝くじと同等ですね。親の場合はその10分の1。

4.考察

AとBでだいぶ確率が違うようです。これはどういうことでしょう?

これを書いているとき、丁度1年くらい前のNewtonの記事を思い出しました。そこには「一致曲線」というのが紹介されています。

簡単に紹介させていただくと、

「歴代の総理大臣の誕生日(月日)を調べると、高々53人の集団なのに、同じ誕生日の人が3組もある。これは偶然か?必然か?」
(ニュートン 1997年1月号 (株)教育社)

というもので、実際の計算方法は、先のAと同じです。
Nに365、nに53を代入すると98%という高い数値がでてきます。

Newtonでは何故か40人で計算していましたが、40人までなら関数電卓で計算できるからかな?

人数を横軸に、確率を縦軸にとったこのグラフを「一致曲線」と呼んでいるのです。

一致曲線

つまり、この確率は直感とは異なり、ある程度人数(半荘数)があれば結構な高確率で一致することがわかります。逆に人間の直感がいかにいい加減かということになるのでしょう。

では、なぜBはあんなに低い確率なのか? もちろん6万局を20万局に変えれば約3倍にはなります。それでも高々百万分の2(子の場合)です。

これは比較する組み合わせの数の違いと考えられます。

Aの場合、20万局のどれとどれが一致しても良いわけですので20万対20万で約200億組!ありますが、Bの場合今現在の配牌対過去の配牌ですから、1対20万で20万組なのです。約10万倍。確率も同じくらいの比になっています。

先の誕生日の例でいうと、

自分と同じ誕生日の人はなかなか見つからない(B)

誰かと誰かが同じ誕生日というのはそこそこある(A)

ということです。
ただし、Aも半荘数が10分の1のとき(子で1万5千局、親で5千局)は、確率0.1%(千人に一人ぐらい)ですので、やっぱり配牌は大切にしましょう(笑)

5.感想

いかがですか?
今回は、確率計算の難しさと、自分の浅はかさを改めて痛感し、さらに数学が好きになりました(^^;
計算した確率は残念ながら正しくはありませんが、まったく的外れのものではありません。正解に近い値と思います。正解については、出来次第ここで紹介したいと思いますが、時間がかかりそうです。

牌ヤマの場合は総数の比較で、子の配牌の5百万倍、親の配牌の百万倍ありますので、もっと出会えないわけです。

質問への回答の中でも書いているとおり、この確率を計算したり、知っていたりしても、勝ち負けにはまったく関係ないでしょう。「無意味」かもしれません。
しかしこの作業を通して、私は改めて配牌を大切にしようと思いました。
配牌にしばられて手を進めるのは害もありますが、そういうことではなく、

この2度と会えないかもしれない配牌からの最終型を(捨て牌や結果を含めて)最高のものにしよう

と思うのです。

皆さんはどう思われたでしょうか。

さて、これで今回の手抜き講座は終わりです。
手抜きのつもりが大変なことになってしまいましたが、とても勉強になりました。

1998.01.20 DEM.
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