男女平等は可能か? 〜淘汰の話

2012/05/27 17:05 カテゴリ: 生命

日本に限らず多くの社会では、女に比べて男の方が給料が高い傾向にあるようです。

また、管理職の男女差は改善されつつありますが、もっと高い地位・役職となると圧倒的に男が多いのも事実です。

このことに対して「性差別であり是正されるべきだ」と言う人がいます。
決して少数派ではなく、そのように思っている人は多いでしょう。

念のために書いておきますが、そのような主張を否定するつもりはありません。

ここではヒトの進化のハナシをします。

そもそも生物として、男女は備えている気質が異なり、その違いに依る役割分担が存在するのです。

それを無視して平等を唱えるのはいかがなものか、と言いたいのです。

女より男の給料が高くなっているのには大きく2つの理由(要因)があります。

ひとつは社会制度などが不当に女性不利になっているということ。
もうひとつは男女の気質の違いです。

前者と後者をいっしょくたに議論するのは不毛です。
前者は可能な限り是正されるべきですが、後者は受け入れるべきです(男も女も)。

現代の男女の役割分担を考えたとき、このふたつはとても混同されやすく、混同したままでは実のある議論は困難です。
明確に分ける必要があります。

では気質の違いとはどういうことなのでしょうか。

詳細は割愛しますが以下のようなことが言われています。

男は女に比べて攻撃的で競争的でリスクを冒しやすい

少し長くなりますが、この気質を獲得した経緯を説明してみます。

生物は自然淘汰によって進化してきました。

捕食者や環境の変化などに対応して、生存に有利な気質を持つものがそうでないものよりも多くの子を残す。
これは広い意味で「競争」と言えます。

「競争」に勝利した個体(あるいはその気質を与える遺伝子)は子孫を多く残します。
私たちは独り残らずこの「競争」を勝ち抜いてきたものたちの子孫です。

この「生存をめぐる競争」では大きな男女差はありません。

では男女の気質の違いを産むのは何なのか。

性淘汰という言葉をご存知でしょうか。
生物の進化を考える上で自然淘汰だけでは説明できないことの多くが性淘汰で説明できます。
クジャクのオスの尾羽が生存に不利と思えるほど大げさなのは性淘汰によるものです。

性淘汰とは、繁殖相手をめぐる「競争」による進化のことです。

メスを獲得するためのオス同士の競争、メスによるオスの選別はとても厳しいのが普通です。

何を進化させるかは種によって異なりますが、オスはオス同士の激しい競争、またメスによる厳しい選別を受けて進化してきました。

メスもメス同士の争いがあり、オスの厳しい選別を受けるのでは?と考える人もいるかもしれません。

しかし実際はメスの競争はオスと比べてずっと穏やかであることが普通です。

それにはわけがあります。

極論すればオスとメスの違いは配偶子の違いであると言えます。

そもそも「小さい方の配偶子をつくるもの」がオスの定義なのです。

なぜオスとメスで配偶子の大きさが異なるのかについてはここでは書きませんが、調べていただければわかると思います。

大きい方の配偶子とは一般的に卵と呼ばれるもので、受精後に必要となる栄養分を含み、自身ではほとんど動けません。
小さい方の配偶子とは精子のことで栄養分は含みませんが、活発に動き回れます。

根本的にここが違うのです。

受精に必要な配偶子は卵も精子も1つですが、卵は高コストで貴重、精子は低コストでたくさん作れます。

この違いによりオスとメスはそれぞれ別の繁殖戦略を進化させてきました。

オスは交尾の機会が目の前にあったとき、それを回避する理由がありません。

ここはモラルとか社会制度は一旦忘れてください。
純粋に配偶子の大きさの違いからわかることを説明します。

より良いメスが後で現れても今の交尾が繁殖上のマイナス材料にはならないのです。
精子は低コストでたくさん作れるからです。

メスは無駄な繁殖は避けなければなりません。
卵が貴重だからです。

貴重な卵を作る役割のメスには妥協は許されません

オスを厳しく選り好みします。
このことがオスの競争を激しくしているのです。

もうひとつ、メスには受精不可能な期間があることに注目する考え方があります。
哺乳類では妊娠〜出産〜授乳期間は新たな妊娠はしない特徴があります。
また、発情期にしか妊娠しない種もいます。

このことは仮にオスとメスの個体数がほぼ同数であったとしても、恒常的に(妊娠可能な)メスがオスの数より少ないことを意味しています。
自然とメスをめぐってオス同士の争いが起き、メスは多くのオスから選ぶことになるのです。

このような性淘汰の圧力があることで、オスはリスクを怖れず競争する気質を獲得し、競争に勝つための攻撃性も獲得したのです。

オスはメスと異なり、そのような気質があることがわかりました。
では、この違いが給料の男女差にどのように関わっているのでしょうか。

すべての男が攻撃的なわけではないですし、攻撃的・競争的・リスクを冒しやすい女もいます。
しかし全体で見れば男女にはそのような違いがあります。

平均で見ればその差は小さいものかもしれません。
しかし、極端に攻撃的・競争的・リスクを冒しやすい人を集めればその男女差は極端に男多数となります。

このことは身長を例に考えるとわかりやすいかもしれません。
男女の身長差は平均ではせいぜい十数センチで、男の平均より大きい女性はいくらでもいるし、女の平均よりも小さい男も珍しくありません。
男女を身長だけで判別することは困難でしょう。
しかし180センチ以上という極端な範囲で見れば、男女比は 200対1 と、圧倒的に男多数となるそうです。

個人差はあるものの、平均でみて明確な違いがあり、極端なケース(非常に攻撃的とか180センチ以上とか)では違いはさらに顕著に現れます。

「身長」を「収入」に置き換えてみれば現代社会によく当てはまることがわかると思います。

本題に戻りましょう。
攻撃的・競争的・リスクを冒しやすい気質があるとどうなるのでしょうか。

遠い昔、リスクを怖れずに好んで競争したオスは、闘いに敗れて致命傷を負ったかもしれません。
しかし競争を避けてメスを獲得することはほとんど不可能ですから、競争を回避すること自体が自殺行為です(子孫を残せないという意味で)。

一方で、競争に勝つことで時には複数のメスを獲得することも可能です。
勝ったオスは敗れたオスの縄張り(ひいてはそこにある食料)も手に入れたかもしれません。
資産(縄張りや食料など)の多いオスはそうでないオスに比べて多くのメスを獲得できたでしょう。

オス同士の競争はリスクが高い反面、勝者の得るものも大きいのです。

これと似たことが現代社会でも起こっています。

男は社会の中でも半ば本能的に高い地位に就こう、資産を築こうとします。
そうでない男もいるし、高い地位に就こうとする女もいます。
しかし、極端な成功や極端な失敗に繋がるような行動となると男の独壇場です。
極端な失敗を怖れずに行動するのは男独特の気質なのです。

極端な成功者だけでなく極端な失敗者もほとんど男なのです

平均でみたときに男の方が給料が高いことは、社会制度に起因する部分もあるでしょう。
しかしそこには気質による差異が少なからず含まれているはずです。

まして、高い地位や役職に就く人の男女比が著しく男多数に偏っていることを是正するために社会制度を変えても、たぶん問題の解決にはならないでしょう。

平等でないことを是正しようと思うなら、そう思う人こそ、そもそもの違いを見極めるべきです。

女より男の給料が高いわけ 進化論の現在 (シリーズ「進化論の現在」)

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