第5回 倍々プッシュは好戦法か?

今回は博打のシーンでよく見かける倍々プッシュ戦法(?)について、その危険性を見てみたいと思います。
少しでも博打をされる方なら、この戦法が大負けの危険をはらんでいることは十分実感されていると思いますが、それを数字で示したいと思います。

1.倍々プッシュ戦法とは?

まず、この戦法について簡単に整理しておきましょう。
あるゲームで負けたとき、次の投資額を倍にして今の負けを取り戻そうというのがこの戦法です。この方法だと、いくら負けても最後に一回勝てば元が取れることになります(倍率2倍のゲームの場合)。
つまり、ある程度継続して実施されるゲームに対し、継続して投資する際の「負けないための(?)戦法」と考えることができます。

投資額勝敗収支
×−1
×−3
×−7
+1

2.良く見かける倍々プッシュ戦法

上では非常に単純な形で見てみましたが、実際はもう少し手を加えた戦法を良く見かけます。

【表】ルーレットの大中小の倍々プッシュ

投資額勝敗収支
×−1
×−3
×−7
+9

3.本題

さて、問題は「倍々プッシュ戦法が良い戦法か」ということですが、ポイントは「永続性」と「勝ち味」の2つと考えます。
まず「永続性」です。この戦法は最後に勝てば元が取れますので一見固そうですが、ゲームが「永遠」に続き、元手が「無尽蔵」にあることが条件になります。これは常識的に不可能でしょう。
次に「勝ち味」ですが、基本的に元返しの戦法ですので、連勝しないと「勝ち」になりません。また、勝ったら投資額を最初に戻しますので、大きく勝つことは非常に難しい戦法です。

では、永続的でない現実世界では、何回続けて負けられるでしょうか?

ここでは元手10,000円、最初の投資額100円のケースで考えてみましょう。何回続けて負けられるか直感的に思い浮かべて下さい。

5回ですか? 10回ですか? 20回ですか?

答えは6回です。

100×2=200
100×2×2=100×4=400
100×2×2×2=100×8=800
100×2×2×2×2=100×16=1,600
100×2×2×2×2×2=100×32=3,200
100×2×2×2×2×2×2=100×64=6,400

10,000円も持ってるのに6連敗したらもう次はありません。

投資額勝敗収支
100×−100
200×−300
400×−700
800×−1500
1600×−3100
3200×−6300
6400×−12700

指数関数は恐るべき速度で大きくなります。それを実感できる例を次に挙げます。

4.指数関数の凄さ

初期値がいくら小さくても、それを倍々にしていくとすぐに大きな数になります。
それを実感できる有名(?)な例を紹介しましょう。

あなたは新聞紙を100回折り畳むことができますか?
100回折ったら厚さはどれくらいになるでしょうか?
また、月までの距離である38万kmにするには何回折ればいいと思いますか?
新聞紙の厚さは0.05mm(20枚で1mm)とします。

1回折ると、重なる枚数が2倍になるので、例えば3回折ったときの重なる枚数は

3=8

と計算できます。
さて10回折ったらどうでしょう。

10(=1024)

をおよそ

103(=1000)

とします。

厚さT=0.05×210
   ≒0.05×103(mm)
   =5(cm)

ふーーん。という感じでしょうか。では100回折ると?

厚さT=0.05×2100
   =0.05×(210)10(mm)
   =0.05×(103)10(mm)
   =0.05×1030(mm)
   =5×1028(mm)
   =5×1025(m)
   =5×1022(km)
   =5×1018(万km)
   =(約)5×109(光年)
   =50億光年

です。びっくりしました?
では38万kmにするには?

答えは高々43回です。

厚さT=0.05×243
   =0.05×23×(210)4(mm)
   =0.4×(103)4(mm)
   =0.4×1012(mm)
   =4×1011(mm)
   =4×108(m)
   =4×105(km)
   =4×10(万km)
   =40万km

折る回数厚さ
10.1mm
105cm
2050m
3050km
405万km
505千万km
60500億km
705光年
805千光年
90500万光年
10050億光年

すごいですね〜。倍々プッシュは程々にして下さい(笑)

さて、これで第5回の内容は終わりです。
あんまり数学講座とはいえない内容でしたね。

1997 DEM.
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